寄稿エージェント: 安達 克輝
新規事業は、ローンチすれば成功という単純なものではない。黒字化させて初めて新規事業を成立させたことになる。
事業の規模にもよるが、大きな事業であれば黒字化まで短くても1年、長ければ数年以上かかることも珍しくない。
では新規事業を成功させていくためには、どんなことに注力していけばよいのか。
本記事では、新規事業を成長させるために理解しておくべき4つのフェーズ、ポイントついて詳しく解説したい。
新規事業立ち上げで理解すべき4つのフェーズ
新規事業を立ち上げていくなかで、まず前提として理解しなければならないことは、「事業曲線」だ。
事業というのは、以下の通り大きく4つのフェーズに分かれている。
・導入期 ・成長期 ・成熟期 ・衰退期 |
フェーズごとの特徴を見ていこう。
導入期
一般的に導入期は、マネタイズ(収益化)していくためにアイディアを出し、それを形にし、継続していく部分にあたる。
競合他社が少なく、エンドユーザーの潜在ニーズを満たせていない市場であり、新規事業を展開するには最も適したフェーズだ。
一方、0から1を生み出す創業期のため、社員数は少なく社会的な認知度も高くはない。
つまり4つのフェーズで、人・物・資金・情報といった経営資源が最も乏しい時期でもあり、アイディアと行動力でカバーしなければならないのが特徴だろう。
これらを踏まえ、導入期で留意すべき点は以下の通りだ。
・マーケットで先発優位性を獲得するためスピーディーなアイディア出しが必要 ・アイディアを形にするため泥臭く行動し続ける忍耐が重要 ・短期的な売り上げは確保しづらい傾向にある |
これらを乗り越えることで、生み出した事業がマネタイズを成功させる要因となり、成長期に繋がっていく。
導入期をどのように乗り越えればよいのかについては、後述で解説したい。
成長期
成長期は、導入期で築き上げた1を10に成長させていく時期であり、認知度アップの集客施策を展開することで新規顧客の獲得を目指すことができる。
また、基本的に競合他社はそれほど多くはなく、自社の認知度が拡大し、徐々に売り上げも増加していくステップだ。
そのため、一気に成長していける時期であり、資金調達もしやすく、事業規模の拡大とともに新たな人材確保も必要になる。
導入期よりは事業の安定性が増す一方、優秀な人材の確保や認知度アップなど、さらなる努力が不可欠だ。
成熟期
成熟期は、成長期で築き上げた認知度・実績・人材・顧客などをもとに安定的に事業を運営でき、さらなる事業拡大も視野に入る時期だ。
ただし、ここから競合他社が入ってくることになり、事業成長率に関してはそれほど高くない。
加えて、プロジェクトも成熟し始めたため、このタイミングで参画したとしても、一般的にプロダクト開発等、中核に関わることが難しいと言われている。
成熟期を乗り越えるためには、メイン事業の拡大のみならず、関連事業で新規立ち上げを模索するなど、横展開の発想や新たな市場への参入によって、事業のリスク分散が求められるだろう。
また、0から1を立ち上げるのではなく資金的に余裕があることから、事業買収も視野に入るフェーズだ。いかに安定飛行できるかが鍵を握るだろう。
衰退期
長らく成熟期が続いた後、衰退期が始まり、何かに代替され始めていく。
今の時代でいうと、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI化されるようなことだ。
そういった何かしらの手段に代替されてしまい、衰退していくのがずばり衰退期だ。
このフェーズでは、過去の実績や売り上げにとらわれることなく、レガシーシステムからの脱却、最新テクノロジーの導入、衰退事業の整理など、柔軟な対応が求められる。
また、成長期や成熟期で目先の利益に左右されず、先手を打つための事業戦略が重要だ。
時代に合わせた事業の軌道修正や課題から見える改善策の立案、実行など事業を衰退させない根気強いPDCAが必要となる。
新規事業を成長させるためのポイントとは
ここまで、導入期・成長期・成熟期・衰退期と4つの事業フェーズを紹介させていただいた。
その中で、新規事業をスタートする場合には、いかに導入期を乗り越えることができるかにかかっている。
ここでは、導入期を乗り越え、新規事業を成功に導くためのポイントについて整理していきたい。
要点は、以下の通りだ。
【新規事業を成功に導く4つのポイント】
1. 経済的価値 2. 希少性 3. 差別化 4. 組織体制 |
1つ目が、経済的価値だ。これはつまり、そもそも市場にニーズがあるのかという部分を意味する。
どんなに腕が優れていても、魚のいない川では魚が釣れないように、需要がなければ生み出したサービスが浸透しない。
参入する市場において見込み顧客の母数はどの程度か、どのような潜在ニーズが存在するのか、詳細に洗い出す必要があるだろう。
そして2つ目は、希少性だ。
既に似たようなサービスが展開されていないかどうか。また独自性を担保できているか。この部分を十分に検討する必要がある。
3つ目は、差別化だ。実際にマネタイズできたとしても、競合他社が参入すると、他社からすぐに真似される可能性がでてくる。
たとえ真似をされても、生き残ることができるサービスまたは商品かどうかが大事だ。
4つ目は、組織体制である。実際にそのアイディアを実現できる体制になっているのか。組織化されておらず、担当者に属人的ではないか。
例えば、内部で仕組み化され、どの担当者であっても効率よく事業を回せる組織体制であれば、事業の急成長も期待できる。
このように、4つを加味した上で、新規事業を考えていく必要があるだろう。
新規事業立ち上げで理解すべきキャリアの選択
先ほどは、新規事業を成功に導くポイントについてご紹介したが、それ以外にも、キャリア選択の重要性について触れていきたい。
新規事業を立ち上げていくためのキャリアパターンは、大きく分けて次の2種類がある。
【新規事業のキャリアパターン】
・アントレプレナー ・イントレプレナー |
アントレプレナーというのは、自分で起業していくこと。この場合、すべての責任を自分自身で背負う必要がある。そのため、判断力が大変重要だ。
その判断力を養っていくためには、豊富な知識や経験値を蓄えていく必要があり、これまで生きてきた自分自身のすべてをつぎ込んでいく覚悟も大事となってくる。
一方でイントレプレナーは、社内で起業していくことである。
社内で起業していく場合、どんな立場を担っていくのかについては、大きく3つの種類が考えられる。
【イントレプレナーのポジション】
・新規事業責任者 ・小会社の社長 ・自分と会社で折半して出資 |
いずれのパターンでも、自分自身が100%のリスクを追っていくわけではない。
しかし、ステークホルダー(利害関係者)という立場上、自由度は制限されてしまうだろう。
それぞれのメリットとデメリットを理解し、自身のキャリアをどちらの方向に持っていきたいのかを検討した上で、決断していく必要がある。
また、新規事業を立ち上げたら、実績と実力が正しく評価されるシステムづくりに注力すべきだ。
実績については、いわゆる年功序列ではなく、実力主義の組織づくり。たとえ若手社員であっても、実力がある社員についてはそれ相応のポストを用意する必要がある。
それが会社全体の士気高揚につながっていくからだ。
ある程度の裁量を待たせて、活躍することで、その実績によって評価がされるような、そんな環境を作るべきである。
さらに、実力の観点からいうと、ある程度独自性を担保する必要があるので、例えば兼業文化がある会社にしていく。
「不動産×IT」のように、何かと何かを掛け合わせた、ニッチな領域を開拓し専門性を高めていけば、その掛け算によって他社が真似しづらいポジションを獲得できる。
それが「差別化」につながり、収益化に大いに役立っていくだろう。
本記事では、新規事業立ち上げで理解すべき4つのフェーズと成功へ導くポイント、さらにはキャリア選択について紹介させていただいた。
まずは導入期におけるポイントを整理して、新規事業を検討してみてほしい。