寄稿エージェント:城後 翔汰
コンサルティングファームのプロジェクトの中で案件も多く、コンサル以外の人も耳にしたことがある「PMO」という役割がある。今回は具体的にPMOとはどのような業務を行い、提供できる価値とは何かをご紹介したい。
抑えておきたいPMOの基本的な役割
PMOとは、「Project Management Office(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」の略であり、プロジェクト推進を横断的に支援する機能・組織のことを指す。
特にシステム開発では、開発規模が大きくなればなるほどPMOの存在が必要となる。それは、フロント側開発のUI/UXの設計やバックエンド側のサーバ構築・運用といった異なる領域を同時に開発しつつ、最終的には統合されたシステム・サービスをリリースする必要があるため、横断的にプロジェクト進捗を管理する機能が必要だからだ。
コンサルティングファームでは、このPMOのプロジェクトは 近年増加傾向にあり、総合系のファームではPMOだけやることもあれば、PMOも開発領域も同じファームでプロジェクトを受注することもある。開発領域まで受注することができれば、コンサルとして大きな売上を立てることができるのでPMOで成果を出すことは中長期的なプロジェクト継続・拡大といった観点でも非常に重要だ。
では、具体的にどのようなことを日常の作業としては行うのか。ざっくりと言えば、プロジェクトが順調なのか、遅延しているのか、といった進捗を管理する。そのため、プロジェクトを進行していく上で必要なタスクを細分化し、仮に100個のタスクがあるならば、ある時点では10個は完了していなければならない、といった具合にタスクを定量化し、実行計画を立てる。それに対して現状は達成しているのか、遅延しているのかを正確に把握する。
多くの場合、すべての段階でプロジェクトが順調で何の問題も発生していない、というケースはかなりレアだと思われる。PMOの本領発揮となるのは逆説的だが、課題・問題が発生しているときの立ち回りである。
重要な意思決定に伴う判断材料を提供
プロジェクトにはプロジェクトオーナーと呼ばれる人や部長・課長といった役職者がプロジェクトの責任者として体制が組まれていることが多い。特に日系企業であればプロジェクトに関する重要な意思決定は部長クラスが行う。
PMOはこのプロジェクトオーナーに対して、プロジェクトの進捗をこまめに要点を抑えて報告する必要がある。なぜならプロジェクトオーナークラスの人はプロジェクトの細かいところまでは把握していないことが多く、とにかく知りたいのは順調なのかどうかだ。
プロジェクトの進捗報告では、現状の進捗に加えて、リスクと課題についても報告を行う。リスクは現状まだ発生していないが、「このままいくとヤバいです」といった将来的に発生しうる問題について報告を行う。観点としてよく言われるのが「QCD」の項目だ。
QCDとは、Quality(質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)のことで、どの項目にどの程度影響を与えるのかといった状況を正確に報告する必要がある。最も重要なのは品質だが、これらは互いにトレードオフの関係性にあるため、品質を高めるために無尽蔵に予算組めるといったプロジェクトはおそらく存在しないだろう。
そして、リスクが実際に発生してしまった課題になったときに対策を打つ必要がある。その際、意思決定権限者が正しく意思決定できるように判断材料を提供するのがPMOだ。
例えば、想定よりも進捗が悪く、このままだと納期に間に合わない、といった状況に陥った場合、打ち手として、タスク自体を減らす、タスクへの工数を下げる(質を下げる)、要員を増やす、納期を後ろにする、など取りうる打ち手は列挙することはできるが、実際にどれを実行すれば良いのか、どの順番で実行すればよいのか、プロジェクトの細かい状況を把握していない意思決定権者は判断できない。
現状の課題、体制、予算、などプロジェクトに関するあらゆる要素を総合的に判断したときの各種対応策のメリット・デメリットを分析し、今取りうる最善の策はこれだと、自信を持って提案する必要がPMOにはあり、プロジェクトオーナーからもこの部分を期待されていることが多い。
このように、プロジェクトが順調に進行することをサポートするPMOだが、加えて、重大が課題が発生したときに正しく報告を行い、意思決定権者にプロジェクト成功のための意思決定を正しく行う判断材料を提供することも求められる。
もちろんプロジェクトが常に順調であるが望ましいが、様々な要因から何かしら問題が発生するのが現場の実態であるため、今回はそのような場合におけるPMOの価値についてご紹介した。