「選びたい放題」は幻想。若手ハイエンド層が30代以降も“自由”でいるためのキャリア戦略論

「選びたい放題」は幻想。若手ハイエンド層が30代以降も“自由”でいるためのキャリア戦略論

寄稿エージェント:新井 万作

はじめに

はじめまして。株式会社アサインのシニアエージェント、新井と申します。

私は早稲田大学を卒業後、教育系事業会社にてキャリアをスタートさせました。営業マネージャーを経て、経営企画室にて事業収益の最適化や営業戦略策定、データドリブンなナーチャリング施策の立案を主導してきました。

そんな私がなぜ今、個人のキャリア支援、それも若手ハイエンド層に特化したヘッドハンターをしているのか。仕事をする意義としては、前職の教育業界にいたときから変わっていませんが、顧客の方と関わるフェーズとアプローチが変わったと感じています。

ビジョナリーに言うなら、その方の人生が伝記になった時に自分が登場することをミッションにこの仕事をしています。キャリアという切り口で、その方が人生を振り返った時に「あの時こういう風に考えて、あの選択肢を取ってよかったな」と感じ、その傍らに思い出していただける人間でありたいと思っています。

現在はコンサル・広告代理店・SaaS・メガベンチャーといった領域を中心に、経営視点と採用コンサルティングの経験を活かし、皆様のキャリアの可能性、市場価値を最大化するご支援をさせていただいています。

本日は、多くの優秀な若手ビジネスパーソンが陥りがちなキャリアの誤解と、本当に納得のいくキャリアを歩むための「自由意志」についてお伝えします。

1. キャリアにおいて「本当の自由」はいつまで続くか

「自分には選択肢がたくさんある」

高学歴で、就職活動でも難関企業を突破してきた皆様であれば、そう感じるのは当然のことかもしれません。しかし、「何にでもなれる自由」があるのは20代までです。

日本の採用市場において、20代までは「ポテンシャル採用」が機能します。未経験であっても、地頭の良さやバイタリティで評価される余地がある。しかし、20代後半からは明確に「ジョブ型」の採用、つまり「何ができるか」の経験で判断される世界へと移行します。選択肢の幅は、年齢とともに急速に狭まっていくのです。

さらに重要視されるのが「組織との親和性」です。 例えば、30代半ばで全くの異業界へ飛び込むことを想像してみてください。受け入れる企業側からすると、年上の新人が入ってくることになります。プロパー社員である20代後半のリーダーが、30代半ばの未経験者をマネジメントする。これは組織論的に非常にコストがかかる状態です。

企業は採用時に、スキルの有無だけでなく「この人はうちの組織に馴染むか」「マネジメントコストが高すぎないか」を冷静に見ています。だからこそ、20代後半から30代にかけてのキャリア選択は、単なる「やりたいこと」だけでなく、「市場からどう見られるか」という客観的な視点が不可欠になるのです。

2. 「新卒就活」の成功体験には意味がない

日々求職者の方との面談でよく感じるのが、新卒時の就職活動の感覚で転職活動を捉えているケースが多いということです。しかし、新卒採用と中途採用は、そもそもゲームのルールが異なります。

〇期待値のタイムスパンが違う

新卒採用、特に銀行やメーカーなどプロパー文化の強い企業では、「一生働いてくれるか」「将来の幹部候補になり得るか」という長期的な視点で採用を行います。だからこそOB訪問を繰り返し、一次面接から熱のこもった志望動機が求められます。

一方、中途採用は人材の流動性を前提としています。「終身雇用」を期待する企業は稀です。「極端な話、3〜5年定着して成果を出してくれればOK」というのが多くの企業の本音です。つまり、中途採用は「結婚相手探し」ではなく「プロジェクトメンバー集め」に近い感覚だと良くお伝えしています。

〇一次面接で見ているのは「志望動機」ではない

この前提に立つと、中途採用の初期段階で過度な「志望動機(御社でなければならない理由)」を作り込む必要性は薄れます。 面接官が見ているのは、「即戦力としての能力値」であり、「コミュニケーションの円滑さ」、そして「逆質問のセンス」です。「なぜ転職するのか」という退職理由は重要ですが、「なぜ御社か」は選考が進み、お互いのマッチング度合いが深まってから固めていけば十分です。

むしろ、「まだ御社に行くかは決めていませんが、自身のキャリアにとってプラスになるか判断したい」というスタンスの方が、優秀な人材として対等な評価を得やすい傾向にすらあります。

3. 人事は履歴書の「行間」を読んでいる

私は採用コンサルティングとして企業の人事部に入り込むこともありますが、中途採用の現場では、皆様が想像する以上に「履歴書の行間」が読まれています。

人事担当者は、過去の膨大な採用データに基づき、大学や出身企業だけで候補者のキャラクターをある程度「予測」しています。

皆さんの周囲でも、どの大学出身で・新卒でどういう業界を選んでいて・何年そこにいるのかで、ある程度その方らしさが出る、と言えばイメージが湧いていただけるかもしれません。

例えば新卒でコンサルを選ばれた方と、銀行を選んだ方、広告代理店を選んだ方、あるいは大手を選んだ方、ベンチャーを選んだ方でキャラクターは大きく異なると思いますし、その企業の中でもどういう大学出身かや何年目かでも若干変わるものだと思います。

これは偏見のように聞こえるかもしれませんが、採用における「リスクヘッジ」の観点では常に行われていることです。 皆様が転職活動をする際、「自分の経歴が相手にどう映っているか(どんな懸念を持たれているか)」を先回りして理解し、その懸念を払拭するエピソードや振る舞いを面接で提示できるか。これが、選考通過率を劇的に変える鍵となります。この「見え方の客観視」こそ、私たちエージェントが提供すべき重要な価値の一つです。

4. エージェント業界の二極化と、私が選ぶ道

現在、人材業界は大きな過渡期にあります。 転職が一般的になり、人材流動性が高まったことで、業界は大きく二極化しています。

一つは、「効率重視のAIマッチング型」。 キーワード検索やAIアルゴリズムを用いて、スキルと求人票を機械的にマッチングさせるスタイルです。「とりあえず数多くの求人を見たい」というフェーズでは有用ですが、そこに個人の深い価値観や、10年後のキャリア戦略という視点は希薄です。

もう一つは、「戦略重視のパートナー型」。 私が目指し、アサインが実践しているのがこちらです。目先の年収アップやブランドだけでなく、その方の価値観や個性を踏まえ、「将来ありたい姿」から逆算してキャリアのシナリオを描くスタイルです。

近年、即戦力を求めるジョブ型採用が加速する中で、求職者自身も気づいていない「自分の強みが活きる場所」や「目指すべき山」を見つけるためには、AIではなく、高度な知見を持った人間による介入が不可欠だと確信しています。

5. 「自由意志」を尊重するということ

最後に、私が支援において最も大切にしている「自由意志」についてお話しさせてください。

哲学的な話になりますが、私は「本当の意味での自由意志は存在しない」と考えています。 人間は、環境の生き物です。「何をしたいか」「何が好きか」という感情さえも、過去に身を置いた環境や、出会った人々によって形成されたものです。 例えば、「グローバルに活躍したい」という意志も、留学経験や海外志向の強い友人の影響を受けて生まれたものかもしれません。完全にゼロから自分が生み出した意志など、ほとんどないのです。

しかし、「何かがしたい」と湧き上がった感情に対し、それを実行に移すかどうかの選択は、ご自身の手に委ねられています。

また、ご自身にどのような選択肢を取ることができるのかをお伝えし、新しい可能性を提示することができるのはエージェントならではの仕事だと考えています。

だからこそ、私は皆様の「過去」を徹底的に深掘りします。 人生の中で最も充実していた瞬間はいつか。 時間を忘れて熱中した仕事は何か。 最も成果が出た時、どんな目標を立て、どんなプロセスを楽しんだのか。

それらの中に、皆様が無理なく、いきいきと活躍できる環境のヒントが隠されています。「どうありたいか」というWillは、過去のご経験の中にこそ眠っているのです。

私たちエージェントの役割は、「どうありたいのかという将来像を考えるお手伝いをし、それを叶えるために、論理的に正しい選択肢」を並べることです。 その選択肢の中から、最後はご自身が納得して選ぶ。それが、プロの支援を受けた上での「真の自由意志」によるキャリア形成だと私は信じています。

最後に

転職をするべきかどうかは、この際置いておいて構いません。 ただ、変化の激しいこの時代において、「自身のキャリアについて戦略的に考える時間」は、すべての方に必要です。

「今の選択が10年後どう繋がるか確認したい」 「自分の市場価値を客観的に知りたい」 「なんとなくモヤモヤするが、言語化できていない」

そんなフェーズでのご相談こそ、歓迎しております。 経営視点と採用現場のリアルの両面を知るパートナーとして、貴方のキャリア戦略を共に描けることを楽しみにしております。