「好き」を仕事にする楽しさとは ― 本物の安定を手に入れるキャリア戦略 ―

「好き」を仕事にする楽しさとは ― 本物の安定を手に入れるキャリア戦略 ―

寄稿エージェント:善本 亮太

「好きなことを仕事にできたらいいな」

誰もが一度は考えたことのある言葉です。しかし、実際にそれを実現している人は多くありません。忙しさや環境、社会の変化に流される中で、「好きなことを軸に生きる」ことは簡単ではないからです。

それでも、自分の価値観=好きで得意なことを軸にキャリアを築くことは、長期的な継続力、成長力、そして本物の安定につながります。好きなことを軸にすると、困難も乗り越えられる原動力となり、仕事を楽しみながら自分の市場価値も高めることができます。ここでは、私自身の経験を交えながら、好きな仕事を軸にしたキャリアの考え方をお伝えします。

■ 好きなことは継続力の源

人生で何かを続けた経験がある方は、こんな感覚を覚えたことはないでしょうか。

・苦しい時期もあったのに、なぜか続けられた

・自然と熱中できた

・時間を忘れて打ち込んでいた

私の場合、それはサッカーと筋トレです。小学生から大学4年までの約16年間、サッカーを続けてきました。週6日の練習に耐えられたのは、両親や周囲の支えもありましたが、何より「努力して目標に近づく過程そのものが好き」だったからです。浪人直後の大学時代は体力的にも精神的にも辛い時期でしたが、サッカーの練習で集中し、試合で勝つ瞬間は格別でした。

社会人になってからの筋トレも同じです。大会優勝を目標に掲げ、減量や厳しいトレーニングを続けてきましたが、続けられたのは筋トレそのものが楽しかったからです。好きなことに取り組む時間は、自分が最も輝いている瞬間であり、努力の持続力を自然に生み出します。

■ 常に輝き続けるために

キャリアの節目でよく聞かれる質問があります。

「一番輝いていた時期はいつですか?」

この質問に「今です」と胸を張って答えられない人は、自分の価値観と向き合うタイミングにあるかもしれません。仕事に満足していても、キャリアを意識せずに生きることはできません。「どんな仕事をしていたいか」「どんな価値を生みたいか」を考え続ける必要があります。その中で、自分の好きで得意なことを仕事に活かせる瞬間こそ、心から充実感を得られるのです。

■ 本物の安定とは

かつての安定は「会社に長く勤めること=雇用の安定」でした。しかし現代では、安定の定義は変わっています。終身雇用が崩れつつある今、安定とは「自分の市場価値を保ち続けること」です。会社に依存するのではなく、自分で作る安定、それが現代における本物の安定です。

本物の安定を構成する要素は主に三つです。

①再現性のあるスキル

どんな環境でも通用する汎用性の高いスキルは、安定の核となります。

例:営業であれば「課題発見力」「仮説検証力」「交渉力」、マーケティングであれば「分析力」「再現性のある集客スキーム」、カスタマーサクセスであれば「顧客課題の構造化」「関係構築力」など。

②情報と変化に対する柔軟性

安定している人は、変化を恐れず、環境の変化に素早く適応することができます。AIやSaaSなど新しい技術や働き方が登場したときに「どう活用できるか」を考えて行動できる人は、環境が変わっても強いです。

③人的ネットワーク(信頼資産)

信頼を築いている人は、転職や副業、起業など、あらゆる選択肢でチャンスを得られます。信頼される人は、無形資産としての安定を持っているのです。

■「好き × 得意 × 市場価値」=本物の安定

「好き」を仕事にすることは自己満足ではありません。好きなことは努力を継続する燃料であり、得意なことに変えることで再現性のある強みとなります。そして市場価値のある領域で活かすことで、初めて本物の安定につながります。

私自身、両親が好きな仕事を通じて楽しそうに働き、多くの人と関わる姿を見てきました。その姿から、好きなことには人を惹きつけ、エネルギーを生み出す力があることを実感しました。

① 好きは「燃料」

・「人の成長を見るのが好き」 → 採用・育成・カスタマーサクセス

・「仕組み化や効率化が好き」 → BPR・SaaS・プロジェクトマネジメント

・「発信が好き」 → マーケティング・広報・SNS運用

・「分析・戦略が好き」 → コンサル・データ分析

好きなことは自然と努力量を増やし、継続力を生み出します。

② 得意は「再現性」

好きなことを論理化・スキル化すると、誰でも同じ成果を再現できる強みになります。

・「人と話すのが好き」だけ → 趣味

・「相手の課題を引き出して提案できる」 → 営業力

・「SNSを見るのが好き」だけ → 消費者

・「伸びる投稿の構造を分析できる」 → マーケター

好き × 得意(強み)=再現性のあるスキル。この組み合わせこそ、安定したキャリアを築く基盤です。

③ 市場価値は「現実性」

どんなに好きで得意でも、市場から求められない分野では安定は生まれません。だからこそ、好きなことを需要のある領域で活かすことが重要です。

・「人に寄り添うのが好き」 → AI時代でも希少なヒューマンスキル(CS・採用・人事)

・「モノを売るのが好き」 → SaaSやECなど成長業界の営業

・「言葉で伝えるのが好き」 → コンテンツマーケティング・広報

好き × 得意 × 市場価値の組み合わせが、本物の安定を生みます。

■ 20代・30代の時間の使い方

時間は誰にとっても平等ですが、どう使うかでキャリアは大きく変わります。20代はあっという間に過ぎ、30代、そして次のステージへと進みます。だからこそ、自分の価値観=好きで得意なことに正直であり、個性を最大限に発揮できる場所を見つけることが重要です。

■ まとめ

・好きは努力を継続する燃料

・得意(強み)は再現性を生むスキル

・市場価値はキャリアの現実性を担保

「好き × 得意 × 市場価値」を軸にキャリアを築くことは、会社に依存せず、変化の多い時代でも輝き続けられる最強の生き方です。自分の価値観を軸に、スキルと信頼を積み上げるキャリア戦略こそ、本物の安定を手に入れる道なのです。