若者の「アルコール離れ」飲料メーカーはどう戦うべきか

若者の「アルコール離れ」飲料メーカーはどう戦うべきか

寄稿エージェント: 長谷川 翔 

若者の「アルコール離れ」が言われるようになったのはここ最近のことではない。

もちろん、若者全体を指して、お酒を飲まなくなったわけではないが、彼らよりも年齢が上の世代と比較すると現在の20代における飲酒習慣は10%前後と若いほど飲酒習慣は少なくなっていく。

このような環境変化の中、飲料メーカーの動きについて解説したい。

欧米でも同様に「ソーバーキュリアス」の傾向あり

日本だけでなく、欧米でもアルコール離れが進んでいる。イギリスやアメリカの若者を中心に、トレンドになっているのが「ソーバーキュリアス」。

「ソーバーキュリアス」 とは、「Sober(しらふ)」「Curious(ふりをする)」を組み合わせた造語で、「お酒は飲めるけれども、あえて飲まない選択をする」というスタンスを意味する言葉だ。

数年前からこの「あえてお酒をのまない、ソーバーキュリアス」が、世界の若者の潮流になっている。

若者のアルコール離れの背景として、 健康的で生産的な生活したいと思う若者が増えていることが挙げられる。

デジタルネイティブ世代は、健康に関する情報も豊富で、ヘルシーなイメージを重視する傾向にあり、この傾向がアルコール離れを加速させている。

「若い世代は飲みニュケーションを敬遠する」といったことを聞くようになったが、若者世代にとっては、お酒を飲んだあとの不快感、酔った際の失敗、健康面への悪い影響などを避けたいというのが大きいのではないだろうか。

ノンアルコール市場は拡大傾向

一方で、ノンアルコール市場は拡大を続けている。お酒で健康を害したくない、翌日の不快感をなくしたい、といった背景からもあるように、お酒の持つコミュニケーションツールやおしゃれさといった側面には引き続きニーズがある。

「ソーバーキュリアス」の流れを受けて、ビールやチューハイといった、これまでのノンアルコールドリンクとは違う、新しいノンアルコールの楽しみ方も誕生している。

それが、イギリス発の「モクテル」で、Mock(偽)とCocktail(カクテル)を組み合わせた新しいノンアルコールカクテルの呼び方だ。

ジュースやお茶などのソフトドリンクに、フルーツ、シロップ、割材などを組み合わせて作る、まさに「カクテル」のような複雑な味わいと、おしゃれさが特徴としてある。

飲料メーカーも「モクテル」には注目しており、各社新商品を発表するなど、この市場に乗り遅れまいと動きが活発化している。

コロナで家飲み・ノンアルコール市場はさらに拡大

新型コロナウイルスの影響もあり、家での晩酌が増加している。また、飲食店でも営業しているものの、アルコールの提供ができないなどの制約が出ている。

そういった背景から、ノンアルコール市場は拡大を続けている。少し前は「飲んだ後に運転しないといけない」といったアルコールの代替品として消極的な理由でノンアルコールが選ばれていた。

しかし、現在では、このような外部環境の変化もあり、消費者は積極的にノンアルコールを選ぶようになってきている。

各飲料メーカーはノンアルコール市場への商品投入に力を入れるようになり、バリエーションだけでなく、味も改良され続けているため、アルコールの代替品という位置づけではなくなってきている。

ある調査では、ノンアルコールを飲むようになった理由の1位は「味が美味しくなったから」というアンケート結果も出てきており、ノンアルコールは軽減税率の対象だったこともあり、消費者はより手を伸ばしやすくなっている。

このように、若者の「アルコール離れ」は飲料メーカーにとって、単なる逆風というわけでもなく、新しいマーケットとなる「ノンアルコール市場」の競争を激化させている。

飲料メーカーだけでなく、飲食店でもノンアルコール専門店がオープンするなどトレンドに合わせたプレイヤーが現れてきている。引き続き最新のトレンドを押さえるようにしたい。