寄稿エージェント: 宗万 周平
2016年頃から自動車業界で「CASE」という考え方が登場した。もともとはメルセデス・ベンツが2016年に発表した。
「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字を繋げた言葉だ。
今回は改めて、「CASE」とは何かについてご説明したい。
モビリティの進むべき方向「CASE」
まず、「C」の「Connected(コネクテッド)」。いわゆる通信機能を指しており、モビリティがインターネットを通じて様々なサービスとリンクすることができる。
モビリティの通信機能が高まると、例えば、クルマの中で映画や音楽などのエンターテインメントが、今よりもさらに楽しめるようになどのメリットがある。
また、交通事故が発生したときに自動で通報してくれるシステムの実用化も通信機能の進化にとって、タイムリーかつ正確に行うことができる。
ドライブレコーダーの普及がここ数年急増しているが、ドライブレコーダーが実装される前は事故の状況は当事者間しかわからないことも多く、複雑な事案であれば双方の意見が食い違うこともしばしばあった。
事故状況がタイムリーかつ正確にレポートされることで事故原因の特定がしやすい、クルマの損害状況確認、保険会社の交渉などもよりスムーズになる。
現在でも、カーナビの技術はかなり向上しているが、クルマと交通情報が繋がることで最適な経路の算出や交通量の分散化、交通事故そのものをなくしていくことにも繋がっていく。
自動運転で近未来のカーライフに
「Autonomous(自動運転)」は、文字通りに自動でクルマを走らせる技術のことで年々注目が高まっている。自動運転には複数のフェーズがあるが、ドライバーの運転をサポートするレベルでは実用化がかなり進んでいる。
完全自動化も近い未来に実現されるが、ドライバーの運転を自動運転が支えることで交通事故を減らしたり、ドライバーの体力的な負担を減らすことにも繋がる。
また、MaaSと自動運転には様々な可能性があり、例えば、地方自治体などで路線バスの運行が減ってしまい、住民の移動手段が限定されてしまっているエリアで完全自動のクルマが走ることができれば、住民の新しい移動インフラとなる。
空港などの限られたエリアでコンテナを運ぶためのモビリティなどでは、自動運転の割合が大きくなっており、商業化も進んでいる。
「Shared & Services(シェアリングとサービス)」は、クルマの新しい使い方で、これまでクルマは購入して所有する考え方が基本となっていた。
一方で、最近では「必要なときだけ借りる」「みんなで共同所有する」といったクルマに乗るという体験をシェアする考え方も広まっており、レンタカーとはまた違った形式でのサービスも広がりを見せている。
電気自動車で環境に優しい会社へ
「Electric(電動化)」は、ハイブリッドや電気自動車(EV)を増やしていこうという取り組みを指す。
地球の環境問題対策とも関わるもので、「クルマが吐き出す二酸化炭素を減らさなくてはならない」という大前提が背景にある。
環境問題は自動車だけの問題ではないが、ガソリンを使わず、電気を充電して電動モーターの力で動く電気自動車の普及には大きな期待がされている。
ガソリンの代わりの電気で走ることから、ランニングコストは電気代のみということになり、同じ距離を走行した場合、ガソリン代よりも電気代のほうが安くなる可能性が高い。
また、充電用コンセントやスタンドを所有しているのであれば、深夜料金が割安になっている電気料金プランに切り替えて深夜のみ充電するようにすれば、電気代をさらに安くできる可能性がある。
加えて、地震や台風などの自然災害を原因とした停電が増加傾向にあるが、非常時も電気自動車を非常電源として活用できる点も注目されている。
一方で、現状ではガソリン自動車よりも電気自動車のほうがクルマ本体の価格が高いことが多い。
購入価格が高いことは電気自動車普及の大きな障壁となるが、補助金や減税といった施策で政府としても購入を促進させるように動いている。
このようにモビリティは「CASE」の考え方に沿って、大きく変革のフェーズにある。日本の自動車メーカーはこれまで世界の自動車市場をリードしてきたため、今後も日本が生き残ることができるのかは、変革への対応力が求められている。