寄稿エージェント: 宗万 周平
営業プロセスの初期段階で実施するヒアリングは、事前の情報収集だけでは把握できない潜在的なニーズや、自社商品が課題解決に貢献できる領域などを聞き出せるチャンスとなる。
質の高いヒアリングができれば、提案の精度が高まり、成約に至る可能性が非常に高まる。今回はヒアリングで重要な3つのポイントを押さえていきたい。
信頼感を与える印象力
初回で相手に与える印象は、その後のヒアリングの流れを大きく変えるため非常に重要となる。
当然のことだが、商談相手について事前リサーチしておくなどの準備を怠ってはいけない。
会社HPなどで主要事業、財務情報、コーポレートビジョンなど、検索すれば取得できる情報については必ず下調べをしておく。
加えて、その企業がメインで取り扱っている商品・サービスの業界での立ち位置や競争環境などの周辺情報を押さえておく必要もある。
業界のトレンドや市場構造を理解した状態でヒアリングに臨めば、相手の課題・ニーズに対して、踏み込んだ状態からヒアリング、ディスカッションすることができるため、有益かつ具体的な情報を取得することに繋がる。
下調べを行った状態で、本番のヒアリングでは話しやすい雰囲気を作ることを徹底する。
特に初対面の場合、いきなり課題やニーズと言われても具体的な話になることは難しい。
心理学で「打ち解けた話ができる関係性」を「ラポール」というが、天気やオフィスの話、直近のニュースの話など相手の緊張をほぐすような話題から入っていくことがポイントとなる。
相手が話したくなる傾聴力
トップセールスマンはトーク力やプレゼン力が優れているのももちろんあるが、それと同じくらい重要なのが、傾聴力となる。
特に、ヒアリングの段階では相手の話に真剣に耳を傾ける姿勢を見せることは非常に重要となる。
話の途中で自分の意見を入れたり、言いたいことをまとめようとしてしまうと、相手からすると話の腰を折られてしまったようになるため、相手にもっと話したいと思ってもらうようにするには、まずは耳を傾けることに徹し、必要に応じて共感を示すことがポイントとなる。
相手の話をただ聞いているだけでは話が発展しないため、自分の中で相手に共感できるエピソードがあれば、小出しにしていくのがよい。
自己開示をしていくことで相手からの信頼を得やすくなり、共感を示すことでもっと話したいと思うようになる。
テクニック的なところになるが、相手が話したことを繰り返したり、話すテンポやトーンを一緒にすると人は信頼感や安心感を得やすい。
極端にオウム返しが多いと不自然になるため、逆効果となるが、適切なタイミングと量を見極めるようにしよう。
本音を聞き出す質問力
ヒアリングにおける質問はある程度フレームワークされており、以下を押さえておくことで情報が散らかすことは防ぐことができる。頭文字をとって「BANT」とも呼ばれる。
・Budget 予算:予算の規模感はどの程度か
・ Authority 決裁権:意思決定権者は誰か
・ Needs ニーズ、必要性:何を実現したい、達成したいか
・ Timeframe 導入時期:いつまでに必要か
実際のヒアリングの場では話があっちこっちに行ってしまうことがあり、たくさん話したけれど、結局重要な情報が得られないということは避けたい。
上記項目だけは必須で確認するようにし、意思決定の基準や他社との商談状況などもヒアリングすることができたらさらによい。
また、質問を投げかける順番も重要になってくる。基本方針としては、相手が答えやすい質問から投げかけることが望ましい。
例えば、将来的にどんな課題を解決したい、というような未来に関する質問で抽象度が高いと相手は答えにくく、困ってしまう。
まずは、答えやすい現在に関する質問から投げかけていき、そこから現在から過去に遡るように経緯や背景を確認する。
その後、未来に関する考えや方針といった少し答えにくい質問に繋げていくのが効果的だろう。
このように今回は営業の基本となるヒアリングで押さえておくべきポイントを整理した。
自社製品・サービスをいかに訴求できるかという攻めのトークも重要だが、そもそもの相手の立場やニーズを捉えることでより攻めのトークが効果的になる。ぜひ営業の現場で活用してもらえると幸いだ。