寄稿エージェント:高木 土筆
コンサルへの転職は、ここ数年非常に人気の高いキャリアチェンジだ。様々な業界を見ることができ、その後の転職の選択肢が広いというイメージで、かなり認知されてきている。しかし、実際にはコンサル転職は失敗も多く存在しており、今回はその失敗パターンやキャリアへの影響について説明していく。コンサルへの転職を考えている方に、是非ご一読頂きたい。
コンサルへの転職の失敗パターンとは?
ここ数年、コンサルという職業の人気が高まっている。仕事内容としての魅力に加え、転職者の数が多いことで認知も進んだことが原因だ。
その高い人気の一方で、実はコンサル転職はかなり失敗しやすい。転職のメリットが注目され、ついリスクは少ないと考えられる傾向があるが、決してそんなことはなく、自分が転職をすべきなのかについてはきちんと考えるべきだ。
失敗例はいくつかに分類することができるため、それぞれに分けたうえで詳細な説明を行いたい。コンサルで働くことのイメージを沸かすとともに、ご自身の転職を考えるタネになれば幸いだ。
まず1つ目が、「未経験への研修の少なさによる脱落」である。
コンサルタントに必要とされる能力は数多くあり、基本的なビジネス知識はもちろん、ドキュメンテーション定量分析といったハードスキルから、コミュニケーションや段取り能力といったソフトスキルまで幅広く求められる。
こういったスキルは若手のコンサルでも持っているのが前提と考えられており、新卒の場合は座学の研修に加え、OJT(On the Job Training)も想定された案件配属(アサイン)を行う。
しかし、転職者の場合はそうはいかない、迎え入れる案件のマネージャーもできるという前提で見てしまう。これはもらっているコンサルタントフィーの関係から避けられないのだ。新卒の場合は、究極的には無料でのアサインもある一方で、転職者はほぼ確実に一定水準のフィーがつけられる。社会人経験はあり、年棒も新卒よりは高いため、やむなしである。
ただし、現実には未経験転職者が必要スキルを備えている場合は非常に少ない。ただでさえ環境が変わったうえに、できる前提で進められるので、苦しい経験をすることになる。この経験自体は非常に良いことなのだが、コンサルになるのであれば、「レッテル」という概念を理解しなければならない。
意外に知られていないが、コンサルティングファームでは、できるorできないのレッテルが早々に貼られ、それがかなりの影響力を持つのだ。一度できないというレッテルを張られた場合は、次からのアサインにかなりの影響がでることになり、逆にはじめに見込みありと思われれば、その後はかなり楽になるのがコンサルのリアルである。
この問題への対策は非常に難しい。そこも踏まえて見てくれる上司につけるかまではコントロールできない場合がほとんどであり、最初の案件からある程度戦力になるための工夫が必要となる。この観点は、本記事内で後述する。
2つ目は、労働時間による脱落である
この点ははっきり言っておこう。3回案件を経験したら、少なくとも1回は深夜まで働く案件がある。そこまでの覚悟はして欲しいと思う一方で、それ以上は滅多にないという認識も持って欲しい。
失敗の代表例は、入って数カ月でやめてしまうということであるが、労働時間が原因の場合、
・最初からきつい案件に入って、「これがずっと続くのか」という過度な妄想が進む
・きつい案件に出会った時に、そもそも覚悟ができていないので折れる
のどちらかであることが圧倒的に多い。
覚悟ができていなくて折れてしまうのもさながら、ずっと続くと考えてしまうのも損な考え方である。現実をきちんと捉えながらも、長い労働時間に耐えていくことはリアルに考えていこう。
※ただし、近年は働き方改革に注力するファームもあり、中には労働時間の短いファームもあることは補足しておきたい。
3つ目は、チーム割による希望キャリアからの脱線
コンサルというと、色んな業界で様々なテーマに取り組めるというイメージがある。実際にはそのような環境は少ない。業界のチーム別採用の場合はわかりやすいが、表には出ていなかったとしても、実はIT PMO想定での採用となっていたりすることも多い。
プール制採用ですら、実際には大半の若手はある特定の案件に入ることになっていたり、実際には各チームのパートナーによる担任制のようになっており、同じような案件が続く仕組みになっていたりする場合もある。
経験できる領域の広さが志望理由に含まれる方は、エージェントや転職先の社員から実際のところがどうなのかを聞くことをオススメしたい。中でも、選考時の評価によってアサイン先が変わる場合などは、エージェントと協力して状況を理解していきたいところだ。
未経験からのコンサル転職は現実的?
このような失敗パターンを見ていくと、未経験者のコンサル転職の難しさが浮き彫りになる。一方で、未経験でも転職を成功させる方法は確かに存在し、そのポイントについて触れていきたい。もちろん、この場合の成功は内定だけではなく、入社後の活躍も含めたものを意味している。
大きく転職前と転職後に分けて考えていきたい。
転職前では、自分のキャリアに合ったファームを選ぶことを重視したい。もちろん選考対策は前提として、確かな知識のあるエージェントを活用し、そのファームについての客観的な情報を集めよう。採用状況や合格ラインだけでなく、案件の傾向や昇進の仕組み、卒業生の転職先といった内情まで理解する気持ちで臨むと良い。
このような前提知識の上で、面接における逆質問などを行うことで、事前にキャリアとの整合性を知ることができるうえに、具体質問がゆえに評価も上がる傾向がある。キャリアカウンセリングとファーム知識を兼ね備えたエージェントは少ないが、人生の岐路だからこそ、信頼できるエージェントと一緒に考えていって欲しい。
転職後は、スキルとマインドを支えてくれるメンターを探し、最初の案件で活躍することを意識して欲しい。転職活動の負荷を考えると、スキル面は内定後に鍛えていくしかない。マインドはリテンションが中心で、案件メンバー以外の相談役を設けると良いだろう。この点は、コンサル出身であれば、エージェントでも友人でも構わない。
究極的には自分で頑張っていくしかないのだが、特にスキルは教えてくれる人がいない場合、学習効率やモチベーションからわずかな研修での知識だけで最初の案件に挑むことになる。弊社でも、コンサルへの転職者にはスライド作成、数値シミュレーション、クライアントコミュニケーションなどのトレーニング整備を進めている。
もちろんこれだけトレーニングしても最初から活躍できない場合はもちろんある。ただし、最初の1~3案件のどこかで結果を出し、見込みありのレッテルを得ていくことを重視し、スタートダッシュをする意識で入社して頂ければ嬉しい限りだ。
コンサルからの転職先を考える
コンサル転職を成功した場合に、キャリアの選択肢はどこまで広がるのであろうか。今回は最後に、このコンサル後のキャリアについて考えていきたい。
現状コンサルからの転職は、他のコンサルファームへの移籍が非常に多い。弁護士などの士業でイメージして頂くとわかりやすいが、コンサルはある意味の専門職なのだ。
そのため、弁護士が法律事務所に移ることが多いように、コンサルは他のファームに移るのが多くなることは想像に難くない。こういった転職は、明確な目的があり、通算転職回数に気をつけていれば、十分有益な選択肢となる。
一方で、20代のうちは大手・ベンチャーともに事業会社からの引き合いがあるのも事実だ。企画職や営業職などと幅広いが、これは若手コンサルの、
「基礎スキルが高めで、ビジネスの大枠に触れている」
という共通点を見て採用を掛けているのであり、特化したスキルは見ていないことを理解しておく必要がある。
そのため、専門職の色合いが強いマーケティングや財務などはコンサルが採用される案件は珍しいと言ってもよい。そのため、思考停止でコンサルに行きやりたいことを探すことは避けて、おおよそながらもやりたい領域のあたりをつけ、コンサル経由を考えるべきかという判断を行って欲しい。
また、事業会社への転職は採用枠が水物の傾向が強いため、現職コンサルの方々はチャンスを逃さない姿勢を持って頂くことをオススメする。
30代になると、コンサルも専門職としての傾向が強まり、事業会社転職はよほど経験に合った領域に絞られてくる。20代の幅広さと、その限界を理解したうえで、大切なキャリアを考えていって頂ければ幸いだ。