寄稿エージェント:安達 飛希
本日は慶應義塾大学を卒業後、伊藤忠商事に入社して営業として活躍された後、人材ベンチャーであるYouth Planetへ転職された三代崎さんにお話を伺ってきました。
『自分のキャリアは自分の頭で考える必要がある』と語る彼はどのようなキャリア観をお持ちなのでしょうか。
―――自己紹介をお願いします。
三代崎 伸一郎と申します。
慶應義塾大学を卒業後、伊藤忠商事に入社しました。その後、Youth Planetという人材ベンチャーに転職し、現在は人材エージェントとして働いています。
――――色々とお伺いしたい事はあるのですが、まずは学生生活についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
学生生活の前にまずは簡単な生い立ちをお話すると、私は台湾で生まれ、中学卒業まで台湾に住んでいました。高校から日本に来て、愛媛県で過ごしました。大学からアメフトを始め、ほとんどの時間をアメフトに費やしましたね。準体育会のアメフト部に所属しており、就職活動が始まる大学3年の12月末までは部活漬けの生活でした。
企業ブランドではなく、そこで何を経験出来るか
――――新卒の就職活動で伊藤忠商事を選ばれた理由を教えて下さい
就職活動の軸は3つありました。
一つ目は、海外に携わることが出来るという軸です。
理由としては、私は台湾生まれで中国語を話すことが出来るので、この語学力を活かしたいと考えていました。加えて、父が仕事で頻繁に海外に行っていたので、私も海外に携われる仕事がしたいと考えていました。
二つ目は、世の中に大きなインパクトを与えられる、という軸です。
私が台湾にいた中学生の頃に台湾に新幹線が開通したんです。この新幹線というのは、三井物産が陣頭を切って三菱重工、川崎重工、東芝と協働して取り組んだプロジェクトだったのですが、日本の最新技術を海外で用いて、その国の新たなインフラを創った結果、町がどんどん豊かになっていきました。
これを目の当たりにして、中学生ながらにとても感動したのを鮮明に覚えているんです。こういった経験があり、私も色んな企業とパートナーシップを組んで、世の中に対してインパクトの大きい仕事をしたいと考えていました。
三つ目は、幅広い知見を持ちながらも、何かしらの専門性を有する人材になれる、という軸です。要はジェネラリスト兼スペシャリスト的な人材ですね。
私が就職活動を始めた時期が、ちょうどシャープが台湾企業に買収されたり、東芝が粉飾決算で経営難に陥ったり、ショッキングなニュースが続いた時期でした。
世界を代表する日本企業と言われていた彼等ですらどうなるか分からなくなるということを肌で感じました。これを鑑みると、会社のブランドではなく、その会社で何を経験し、どういうスキルを身に付けられるかという点を重視する必要がありました。
『幅広い知見を持ちながらも、何かしらの専門性を有する人材』になるには、若手のうちから法務から経理・財務、貿易、事業管理などといった基礎的な土台を作りつつ、将来的には自分の強みとなる分野を伸ばしていける環境が総合商社にあると考えました。
――――それでは、就職活動では総合商社のみを見ていたのでしょうか?
いえ、実は総合商社よりもコンサル業界への志望度が高かったんです。
ただ、父に相談した所、以前コンサルティングファームから現場の実情に合っていない提案をされた経験があったようで「ビジネスのビの字も知らないお前が新卒でコンサルに入って、経営者に対して納得感のある提案が出来るのか」と言われたんです。
このアドバイスに凄く納得感があり、『何もビジネスを知らないまま、経験のないまま、人の相談に乗ることは出来ない』と思い、ファーストキャリアにビジネスの現場を一番多く経験できる総合商社を選びました。
――――伊藤忠商事に入社してみていかがでしたか?
様々な経験をさせて頂き、今でも本当に感謝しています。
最初の研修が終わると、会社の看板部署である繊維カンパニーへ配属され、ブランドバックやアパレルのトレーディング業務を担当していました。
私が担当していたトレーディング業務を簡単にご説明すると、海外の工場からブランドバックを仕入れて、日本や海外の顧客に売っていく仕事です。
先輩社員のアシスタント業務からスタートしていくのですが、企画やデザインの細かい修正業務から契約、受発注、納期管理、飛行機や船の輸送アレンジメント、販促活動、予算・実績管理に関することまで、本当に幅広い業務を担当しました。
何かしらの問題が発生した際には中国の工場に行く事になるのですが、中国語を使うことが出来ますので、コミュニケーションは円滑に取れましたね。
一年目は大阪勤務だったのですが、所属していた課全体が東京へ移動になり、二年目になるタイミングで東京に移ってきました。二年目の終盤からは、予算を持って顧客に企画を提案したり、海外の取引先の新規開拓など、アシスタントではない本当の意味での商社の営業活動をしていました。
――――伊藤忠商事で働いてみた感想を教えて下さい
ブランドバックのトレーディング業務では非常に細部まで確認する必要がありますので、楽しいよりも忙しくて大変だ、という感情の方が大きかった気がします (笑)
あとは、業務内容が社内業務が多く占めており、ルーティンのものが多く、マンネリ化が進んでしまっていた点も気になっていました。
ただ、人は本当に良かったです。先輩も同期も非常に良い方が沢山いて、出会えたことに心から感謝しています。
自分のキャリアを勝手に決められた
――――業務のマンネリ化が転職のきっかけなのでしょうか?
それもきっかけの一つではありますが、一番のきっかけは部署異動です。
二年目の最後に異動の内示があり、繊維カンパニ―の中の違うブランドへの異動が命じられました。その内示の内容を簡単に言えば、「これまでやってきた事と同じ事をもう1,2年やって欲しい」というものでした。
表向きでは『色々なことを経験させたい』という話ではあったのですが、相談もなく一方的に決められたこと、言い換えるなら勝手に自分のキャリアを決められたことに凄く違和感を覚えたんです。
サラリーマンなので、異動については頭では理解していたものの、『10年勤めた後に、同じようなことがあったらどうしよう』と不安を覚えるようになりました。
これをきっかけに、自分で自分のキャリアを切り拓けるようになりたいと強く思うようになっていきました。
自分の頭で考える必要がある
――――転職に関しては周囲の反対はありませんでしたか?
父には強い反対を受けました。それこそ転職した今でも少し揉めています(笑)
ただ、親世代と今の我々の世代は状況が変わっているんです。トヨタの社長の終身雇用を保証できないという発言や、みずほ銀行が副業を解禁するなど、数年前には考えられなかった事が起きています。
こんな激動の時代の中で生き抜くには、自分の頭で考えて行動していく必要があるんです。
――――ご転職先としてなぜ人材業界を選ばれたのでしょうか?
人材業界、というよりもYouth Planetの人とビジョンに共感したので、正直なところ当初から人材業界に興味があった訳ではありませんでした。
当然、会社のビジョンにも共感しましたが、なによりも社長の元で働くことで経営者目線を養い自分の市場価値を高められると感じたので、転職を決意しました。
無名のベンチャー企業ですので、周囲から色々と心無い事を言われることもありましたが、リスクを取ってでも挑戦していきたいと思いました。
――――Youth Planetを知ったきっかけを教えて頂けますでしょうか?
実は社長の堀田には就活時にキャリアの相談に乗ってもらっていたんです。
そういった経験もあり、学生の時からこの人の元で働いたら楽しいだろうな、と漠然と感じていました。
そして、本当に偶然なのですが転職活動を始めた時にfacebookでYouth Planetの社長が人を採用したいという投稿をしていたのをたまたま見かけ、『これだ!』と思い、すぐに応募しました。
そしてそこからとんとん拍子で進み、最終的にはオファーを頂き、転職を決意しました。
――――人材エージェントとして働いてみていかがですか?
まず、総合商社で働いたことで新卒の就職活動の時に持っていた『周囲の人とパートナーシップを組み、世の中に大きなインパクトを与える』という軸が変化しました。商社というのはあまりにも規模が大きすぎるので、よく言われる言葉ですが、やはりどうしても歯車のような働き方になってしまうんです。
ですので、『世の中』というよりも一人でも多く、目の前の方の背中を押してあげたいと感じるようになりました。こういったことを考える中で、目の前の人からの『出会えてよかった』『任せて良かった』という言葉が私のモチベーションに繋がることに気付きました。
ですので人材エージェントとして、目の前の方の転職というチャレンジの手助けをするのはとても魅力的だと感じています。
あとは純粋に色々な人とお話するのが毎日とても楽しいですね。
転職して3か月経ったんですけど、幸いにも既に3名ほどのご転職支援をさせて頂きました。40代の方を2名、新卒1年目の方を1名という感じで、両極端ですがこれがまたとても面白くて、やりがいや自分の存在価値というものを肌で感じています。
まずは個人、次に企業の背中を押していきたい
――――今後のキャリアプランについて教えて頂けますでしょうか?
新卒の時に志望していた職種になりますが、経営・組織コンサルタントとして働いていきたいと考えています。
私は商材を持たないコンサルティングサービスというのは、個人の力や価値が試されるような職業だと思っています。
まずは人材エージェントとして個人の背中を押してあげられるようになり、その後経営・組織コンサルタントとして企業の背中を押していけるようになりたいです。イメージとしては30歳~40歳までに顧問や相談役のようなポジションでやっていきたいと考えています。
私は、自分の市場価値が高ければ、企業に属していなくても仕事が出来ると思っています。令和の時代は会社に頼るのではなく、自分の頭で考えて市場価値を高めていかなければならないと思っています。そんな時代に良い意味で危機感を感じています。
――――VIEWをやってみていかがでしたでしょうか?
3位に今の仕事である【人材×エージェント】が出てきていますし、納得感が大きいですね。
VIEWは、今の会社で成長が見込めないと感じているような人がやったら良いと思いました。どういった業界なら自分の価値観を活かして成長する事が出来るのか、調べてみるだけでも面白いと思いますよ。
あと、人材業界に属していない限り世の中の業界や職種についての知識を得る事は出来ないので、キャリアコンサルタントに相談する前にVIEWをやってみても良いのではないのでしょうか。
最も身近な5人が自分の人生を決める
――――誰かに何か伝えたい事があればお願いします。
私が大切にしている考え方で、『最も身近な5人が自分の人生を決める』というものがあります。
この考え方に基づいて、今の自分の身近な5人を思い浮かべてみて下さい。その方達ってどういう人でしょうか?
そして今所謂大手企業で働いている若手に対して伝えたいのは、「誰しもが自分の身を置く環境を自分で選ぶ権利がある」ということですね。今の身近にいる5人を見て、自分が将来なりたい姿に近づいていけるイメージが湧きますか?
もしイメージが湧きにくく、より自分がなりたい姿に近づける環境があるのだとすれば、勇気を出して転職を考えても良いかもしれません。