寄稿エージェント:安達 飛希
転職活動において多くの人が気になる一方で、イメージが湧きづらいのが年収交渉である。今回は、現役のエージェントとして年収交渉の実態についてご紹介したい。
年収交渉は必要か?
転職活動において、いくらの提示年収となるかは、意思決定に大きな影響を及ぼす要素である。
だからこそ、年収交渉はきちんと行うべきであるが、タイミングや方法を間違えるとマイナスイメージに繋がりかねない。
実際に年収交渉することによって、提示年収が上がるかどうかという点についてだが、結論から言えば上げる事は可能である。
最初に中途採用における年収がどのように決まるのかということについて、簡単にご紹介すると。
・面接時の評価
・転職先企業の給与テーブル
・現職での年収
によって決まることになる。
これらの要素で給与の90%以上は確定してしまうのだが、残りの10%分に関しては交渉の余地が残ると考えても良い。
外資系企業なので給与テーブルが厳密に決められており、実質的に交渉が不可能という場合もあるが、年収交渉を正しい形ですることは、実際の年収アップにつながるかどうかは別として、行うべき活動だと思われる。
年収交渉の基本とは?
現場の実情を率直に伝えると、特に若手層の転職に関しては、豊富な経験がない状態で年収に関しての要望を出すことを、ネガティブに捉えられることもある。
そう行った評価を受けないように、正当な形で交渉を行うための基本的な考え方をお伝えしたい。
まず最初に、
自分の現在地を正しく理解し、前向きな姿勢を示すこと。
未経験からの転職である場合には、多くの場合年収が下がることが多い等、転職市場での捉えられ方をきちんと理解している事を先方に伝えるべきである。
また、入社するかどうかわからないと言う状態で年収だけ要求する事は、印象が悪くなることにつながりかねないので、入社の確約は必ずしもできないかもしれないが、魅力に感じている、と合わせて前向きな意向を伝える事は必要になってくる。
2つ目に、交渉の根拠を示すことが挙げられる。希望年収に向けた交渉をする際に、なぜその金額をお願いしたいのかという数字的な根拠が必要になる場合が多い。
具体的には、
・現年収(来年度昇給も時には交渉材料に)
・他企業からの提示年収
などである。
交渉の根拠を示した上で、面接評価や意向度合いを踏まえて結論が出されることになる。
3つ目は、
内定方向に進んだタイミングで始めること
1時選考段階から年収についての話をするのは、人事側としては意思決定に近づいてからお願いしたいと感じるところである。
そのため最終面接を受けた直後や、内定方向だと言う連絡を受けた時が年収交渉に向けた本格的なスタートとなる。
年収交渉のリアルとは?
実際の現場からすると、年収交渉を本人が行うことはなかなか難しい場合が多い。
その理由は、
・本人が言うことによって角が立つ
・採用側の温度感を掴みにくい
という2つが挙げられる。
1つ目については想像にたやすいかと思うが、2つ目について少し詳しく説明をすると、人事側としてその方の評価をオブラートに包まずまっすぐ伝えると言う事はしにくい。
もちろん嘘をつくと言う事は無いのだが、意思決定に向けて微妙な距離感にいる状態で全てを包み隠さず伝える事はしにくいと言うのが実情だ。
また採用側の温度感と言うのは、本人に対する評価だけではなく、会社としてそのポジションにどのくらいの採用熱があるのかといった、採用事情も影響してくるため、普段からコミュニケーションをとっているエージェントにはわかるものの、転職者側から見抜く事は難しいことが多い。
そのため、年収の交渉を含めてきちんと行ってくれてエージェントも見につけられるのがベストだが、友人紹介などでどうしても自分で交渉しなければならない場合には、年収交渉の基本を参考に、取り組んでいただきたい。
以上で説明したように、年収交渉は重要である一方で、センシティブな内容でもある。
転職者の会社で詰める経験や、将来的な年収や市場価値の伸びも含めて、柔軟な考え方をしていただくことをオススメしたい。
我々エージェントとしても、闇雲に練習を上げるのではなく、転職者・採用企業双方にとって良いマッチングになる様、常々心がけている。
簡単ではあるが、年収交渉の基本をご紹介した。ご自身のキャリアプランを考えた上で、より良い転職活動を行うための一つのご参考にしていただきたい。