広告代理店のプランナーが描く『今後の幼児教育の在り方』とは

広告代理店のプランナーが描く『今後の幼児教育の在り方』とは

寄稿エージェント:安達 飛希

2014年に京都大学を卒業後、大手広告代理店に入社された福田さん。

保育園を経営する家に生まれ、現在は大手広告代理店で働く彼女が描く今後のキャリアについてお伺いしました。

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――――自己紹介をお願いします

京都大学を卒業後、2014年から広告代理店でプランナーとして働いています。

クライアントの課題解決のための戦略と企画を一緒に考えて、形にするまでの全体統括を行なっています。

どのようなコミュニケーションや体験を作り出すことができれば、ターゲットを動かすことができるかを考える、という感じです。

プランナーという仕事は、自由です。

課題解決のためになることなら何を考えても構いません。

テレビや新聞などの特定のメディアにとらわれることもありませんし、企画内容もCMだけ、コピーライティングだけという限定もありません。

また、私のクライアントは行政機関から一般企業まで多岐に渡っています。

『個性』を出していけるような環境で仕事がしたい

――――就職活動のときは、どのようなことを考えていましたか?

私は『働く』とき、モチベーションが大切になってくると思っています。

私の考えるモチベーションとは『楽しそう』とか『ワクワクする』といった感覚的で、その人特有のものです。

仕事は自分の時間を使って行うものなので、自分の心が前向きになれるようなものであれば、仕事を楽しいと思えて、仕事を頑張ることができ、成果を出せるだろうと考えてました。

私は皆と同じ働き方をすることが正しいことだとは思いませんでしたし、誰でもできるような仕事はやりたくなかったんです。誰かに言われたことをやるような会社も、自分には合わないと思っていました。 

そこから、自分なりの『個性』を出して働ける仕事が良いなと考えたんですね。

自分はもちろん、周りの人も自分らしく働ける場所がいいと思いました。

仕事が楽しいと思えて、自分らしく働けることを第一条件に、就職活動をしました。

――――世の中に沢山広告代理店がある中で、なぜ現職を選ばれたのでしょうか?

 広告代理店の方にOB訪問をしたときに、髪の毛を刈り上げた革ジャンを着た人が現れたんです。

それが良い意味で衝撃的で…(笑)

自分の思っていたサラリーマン像と全然ちがっていました。

色々とお話をさせていただいて、仕事内容も、見た目も、その人らしいなと思えたんです。この方は『自分を出して働いているんだな』と感じましたね。

「自分は仕事で何をしたいのか」「何が好きなのか」という私の考えや想いを聞いてくださったことも印象的でした。

今の会社は、入社試験でも『自分はどのような人物か』『会社でやりたいことは何か』しか聞かれませんでした。シンプルに、その人そのものを見てくれてるんだ、と感じました。

あと、就職活動中は内定をもらえるようにその会社に合わせて自分というものを意図的に変えていくと思うんですけど、広告代理店には自分の心からやりたいことを伝えられたんです。

そのときに私がやりたいとプレゼンしたものは、人々の健康意識を変える、というものでした。体育会でトレーナーをやっていたこともあり、健康への興味が強かったので、病気になってからではなく、誰もが日常的に自分の体や心を大切にすることができるようになってほしいと考えていました。広告代理店だからこそ、あまり普段は興味のない健康というテーマにおいても、新しいアプローチをすることができ、人の気持ちや行動を変えることができると熱弁しました。

――――プランナーとしての活動の具体的な例を教えていただけますか?

 クライアントからオリエンをいただいてから、彼らの課題や商品、ターゲットなどを踏まえて、何を伝えるのか、どこで伝えるのか、どうやって伝えるのか、何を体験してもらうのかを複合的に考えて、企画に落としています。

イメージを持ってもらうために簡単な例をあげると、

ドリンクを新発売するとなったときに、その商品が働く女性向けでビタミンが入っているものだったりすると、多忙なときに飲むとリラックスできて、栄養もあるうれしいドリンクというアピールをしようということで、「1秒美人」のようなキャッチコピーをつけて、超多忙なビジネスウーマンを起用したCMを考えたり、1秒で消えるデジタル広告を深夜に配信したり、通勤途中にアプローチできるよう電車内広告を掲示したり、土日によく行く場所があればそこでサンプリングしたり、イベントを実施したり…などを企画します。

おもしろい企画を考えるだけではなく、その体験をすることによってターゲットにこちらが意図した行動をしてもらうことが重要なので、メッセージや伝えるタイミングなど企画全体を戦略ありきで考えています。

また、単にイベントを行うだけでも、台本の構成をどうするのか、どのタレントを呼ぶのか、タレントに言ってもらうメッセージをどうするのか、お客様には何を体験してもらうのか、それを拡散するためにはどのような体験にしたらいいのか、ブランド体験となるような装飾はどのようなものがいいのか、事前事後のWEB配信をどのような内容にするのか、など考えることはとても細かく、多いです。

考えた企画をプレゼンして得意先にOKをいただけたら、実施するために協力会社や関係者とやり取りして、アウトプットとして形にしていきます。

――――同じ時期にプロジェクトを複数持つこともあるのでしょうか?

多くて15個、少ないときは5つくらいのプロジェクトが同時に進んでいる感じですね。

クライアントも複数いらっしゃいます。

プレゼンの1週間前は忙しいときもありますが、以前より改善されてきています。

例えば、22時以降に働く場合は事前に申請が必要だったり、毎日労働時間の申請が義務化されたりしています。 

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希望と異なる配属先で『アイデアを形にできない!?』

――――プランナーがやりたくて広告代理店を選んだのでしょうか?

実は最初は営業志望で入社しました(笑)

大学の4年間はずっと体育会に所属していたので、『体育会=営業』といったイメージで勝手に向いているのではないかと思っていたんです。

しかし、入社後の研修でコピーライターの仕事が第一志望になりました。もともと自分が言葉を好きだった、ということに研修を通して気づけたからです。自分の考えた言葉が形になり、世の中の人に届くことはとても素敵なことだな、と感じたんです。

 『自分のアイデアを形にする』ことは、おもしろく、やりがいが持てることだと思いました。

ただ、悲しいことに研修終了後にプランナー配属が決まりました。ずっと前から広告が好きで勉強している人が多く、4年間京都にいて朝から晩まで部活動をやっていた私とは比べものにならないくらい、コピーへの想いも、熱量も、かけてきた時間も大きいものになっていたんだと思います。

――――プランナー配属を発表されたときはどう思いましたか?

コピーライターになれなかったことに関しては、とっても落ち込みましたね(笑)

小さい頃から『言葉』というものが非常に大事だと認識していたんです。言葉一つで相手の受け取り方が全くちがってきます。相手の想いや考え方も、言葉だけでネガティブにもポジティブにも変えることができることをおもしろいな、と思っていました。

人が何気なく当たり前に使っている言葉を用いて『自分のアイデアを形にできる』ことに魅力を感じていたんです。

それで、そのコピーを見てくれた人が喜んでくれたり、ふとしたときに思い出してくれたりしたら、それほど嬉しいことはないと思っています。もうそれが叶わないんだ、と思ってとても悲しくなりました。

プランナーを続けていて、そんなこともなかったと気づくんですけどね(笑)

――――プランナーに配属されたことに関して、いま振り返ってみるとどうでしょうか?

今考えると、プランナーの方が向いていると思います。

『自分のアイデアを形にできる』という点ではコピーライターと同じですので、私のやりたいことと合致していました。

研修においても言葉ではなく、生活者の体験そのものを企画する方が向いているのだと判断されたんだと思います。

私は好奇心旺盛で色々なことに興味があるので、言葉という表現だけをやり続けていたら、何年後かにガス欠みたいな形になってしまいそうで(笑)

一方でプランナーはルールは何もないというか、何を考えても良いので、どのような表現をするかを自由に考えられるのは幅が広くてとてもおもしろいです。

人の想いを動かして、その人に行動してもらうにはどうすればいいかを考えて、体験をデザインしていくことは楽しいです。プランナーとして、自分のアイデアを形にできることを身をもって体感できたことは、私にとってとても貴重な経験になっています。

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これからは『理念』を伝えられる、強い想いがある保育園が必要

――――将来的にどういうことやりたいのでしょうか?

私の実家が保育園を経営しているのですが、実家を含めて保育園のあり方を変えたい、と考えています。

広告代理店でプランナーをしており、保育園の知識が全くないからこそ、新しい視点で保育園をみることができました。保育園の素晴らしいところはもちろん、働き方として改善できる点や働く女性からの保育園へのニーズを考えるようになりました。

そして、今後の保育園や子どものことを考えると、保育園自体のあり方を変えるべきだと感じました。

――――具体的には保育園のどういった所を変えようと考えているのでしょうか?

『とりあえず預けることができる保育園』から、『保育内容で選ばれる保育園』にしていきたいです。

保育や教育の方針や考え方、理念を抱き、それを主体的に行っていく保育園を当たり前のものにしたいと思っています。

今の入園システムは保護者さんが自治体に保育園の希望を複数書いて、自治体がそれぞれの保育園に割り振るという形になります。待機児童がいる都心部などでは、確固たる保育への思いがなくても園児を集めることができる状況のところもあると思います。

しかし、少子高齢化にあたって、保育園として『こういう志を持っています』という、理念や保育方針を保護者の方々に伝えていく必要があると考えています。

受動的な保育園ではなく、能動的な保育園にしたいと考えています。

また、保育士の社会的地位の向上に取り組みたいと思っています。『保育士』と聞いて『資格を取れば誰にでもできる仕事』と思われる人もいるかもしれません。保育士という仕事は、子どもや社会にとってかけがえのない仕事です。給与や働き方を実家の保育園から変えていき、将来的には保育士の新しい働き方を生み出したい、と考えています。

――――その他に取り組みたい課題などはありますか?

『働く女性の子育てのあり方』を変えていきたいと考えています。

男性も子育てをするようになってきていますが、今でも日本では子育ては女性の役割というイメージがまだまだ根付いている、と働く女性の立場から感じます。

働く女性がキャリアも家庭も両立できるような働き方を実現できるような社会にしたい、と考えています。

――――具体的にどのような取り組みを考えていらっしゃるのでしょうか?

子育てがより楽しくなるようなものを提供していきたい、と考えています。

そうすることによって、子どもをもっと大切にできて、家族をもっと好きになることができて、その人の人生がよりしあわせなものになると信じているからです。

子育てをしていて『うれしかったり、しあわせな気持ちになるようなポジティブなこと』を増やすことはもちろんですし、『時間や手間のかかるネガティブなもの』を解決することも、子育てがより楽しくなる手段だと思っています。

保育園側としてできることとして、夜ご飯用に栄養のあるお惣菜を販売をしたり、親子で一緒にご飯を食べられるスペースを提供する、子どもを家まで送迎する、などがあります。

実は、保育園に時間ギリギリに迎えに来られる方も多いんです。仕事を頑張って、保育園の時間までにお迎えに来て、買い物をして、帰宅して料理をして、子どもの世話をして…と、とても忙しいんです。

子育てのハードルを取り払うことは、働く女性のサポートの一つの形になると考えています。

保育園以外だと、子どもの成長記録をデザイナーが世界に一つだけのオリジナルのフォトブックにしてくれるサービス、赤ちゃんのための1ヶ月使い切り無添加スキンケアグッズ、子ども向けの栄養のあるご飯を365日毎日宅配してくれるサービス、子育ての悩みや不安を24時間いつでも保育士に相談できるオンラインサービス、妊活用のAIチャットボットなど、色々なアイデアが浮かんできます。

私は、働く女性には求められることが多すぎると感じます。『仕事もこなして、子育ても頑張る』私には到底できないと思います。

本当にお母さん、お父さんはすごいなあ、といつも感心します。

余裕がないと楽しいはずのことも楽しくなくなってしまうので、心のゆとりを生み出せるようなサポートができるとうれしいです。  

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2020年に保育園をゼロから作る

――――実際に現在活動されていることはありますか?

最初に行ったことは、私はビジネスというものをマーケティングの観点からしか知らないということに気づき、経営を学ぶために2018年からMBAに通い始めました。

そこで学んだ知識や自分のアイデアを元に、現在は実家の保育園の経営改革を行なっています。これからの未来にはどのような保育園であるべきかを考えて、それに合わせて経営理念や保育方針を見直しています。

保育園のあり方だけでなく、保育士の働き方も変えていかなければいけません。子どもを保育する時間を増やすことは、保育の質を上げるために重要なことです。

他にも、保育士の個性を活かした働き方をサポートできるような体制や環境づくりに取り組んでいます。

その他にも保育士のモチベーションづくりや育成、ロゴ作りやHP制作といったブランディングなど、HRやPRに関することも行なっています。

もう一つは、保育園そのものについてゼロから考えるプロジェクトを進めています。未来の保育園としてのあるべき姿をアイデアから形にしていき、新しい保育園を作ろうと考えています。子どもたちにとって望ましい保育園とはどのようなものか、保育園でどのような体験ができるといいのか、地域コミュニティとしてどのような場所であるべきか、を考えています。

――――具体的にはどのようなものになるのでしょうか?

子どもの夢を形にできる保育園を作りたいと考えています。

日本人は特に低いのですが、『自己肯定感』が私の中の一つのテーマになっています。

幼児期にたくさんの成功体験を積むと、『自分はできる!』と自分を勇気づけることができるようになります。自分への信頼や自分を大切にする心が育まれるんですね。

逆に自分のできないことや、苦手なこと、やりたくないことばかりを言われ続けると自分に対してどんどん自信がなくなってきます。

幼児期の『自分はできる!』という気持ちは、大人になっても一生消えないものになります。はっきりと思い出せなくても、潜在意識の中に刻み込まれていると思っています。

その自己肯定感が将来の自分への自信になり勇気となるので、自分の意志を持って行動できたり、主体的に自分のやりたいことを行えたり、自分の個性を大切にすることで他人の考えや多様性を受け入れるゆとりが生まれたりします。

自分だけの人生、そして自分にしか体験することのできない未来を、自信と希望を持って歩んでいける子どもに育ってほしいです。

私は、保育園で子どもの夢を形にすることがその一歩になると考えています。

例えば、パン屋になりたいと考えている子がいるならば、その子と一緒にどのようなパンを作りたいかを考え、その子と一緒にシェフにそのアイデアを伝えて、実際にそのパンを作ってみるんです。作ったパンをお母さんと一緒に食べて、それでお母さんが喜んでくれれば、その子にとってすっごく大きな成功体験になると思うんです!

その子がやりたいことを形にするので、単なる職業体験ではありません。ゾウになりたい子、宇宙が大好きな子、ヒーローになりたい子など、子どもには大人が想像できないほどおもしろくてステキな夢やアイデアがあります。

その夢を自分の力で形にすることができれば、大人になってもずっと記憶に残るような経験になると思うんです。

――――保育園をゼロから作り直すとおっしゃっていましたが、建物自体を変えて建て直す必要はあるのでしょうか?

それは良い質問ですね(笑)

私は『体験』をとても大切なものだと考えています。そして、体験をする場や環境も同じくらい大切だと思っています。

例えば、壁の色や照明の明るさ、床の柔らかさとか、それらが変わることで体験自体の感じ方が大きく変わってきます。特に、子どもは感受性がとても豊かです。

実家の保育園は何十年も前に建てられた歴史のあるものなので、当時の教育のあり方を反映した場になっています。時代が変わり続けているからこそ、今、そして未来の子どもたちにとってあるべき形に作り変えていく必要があると考えています。

――――いつ頃からそのようなことを考えるようになったのでしょうか?

仕事に慣れてきた社会人3年目くらいです。

それまではあまり自分のことを考える時間は取れませんでした。仕事量がもともと多いので、目の前の仕事に本気で取り組む、自分の時間がない、さらに仕事が増える、というように自分のことを考えないループができてしまっていました。

自分にとって本当に大切なことや、やりたいことも考えた方がいいなと思い、意識的に時間を作るようになったんです。 

そこで考えたことは、実家の保育園でした。母が主に経営し園長を勤めているのですが、ビジネスというものを理解し始めたからこそ、「実家の保育園はどうなっているのだろう?」と気になったことがきっかけです。

同じ頃に、『保育園落ちた、日本死ね』が印象深いと思いますが、待機児童についての社会問題が起こりました。それに続いて、ブラック保育園や保育の質の低下など様々な保育園関係の課題が飛び込んできたんです。

また、働く女性の子育てと仕事の両立の難しさを身の回りの人やニュースから実感するようになってきました。

自分のやりたいことと社会的な課題が重なったこともあり、私がこの課題を解決し、働く女性の子育てと保育園のあり方を変えるんだ、と強く思えたとても良いタイミングでした。

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――――VIEWの結果にも出ているようなITサービス等に関しては興味を持たれたことはあるのでしょうか?

会社や企業にはこだわりがなく、それよりも自分が何をやりたいか、という目的を前提にして仕事を捉えるようにしています。

子育てをしている人や保育園が抱えている課題に対するソリューションの一つになるという意味でITに興味がある、というイメージです。課題解決の手段としてITの可能性を感じています。

IT業界は他の業界に比べて自由度が高いところが良いと思います。仕事のやり方や進め方など仕事への裁量が大きく、自由であることは私にとって大切な視点ですね。

会社に支配されている歯車の一つではなく、会社と対等な関係である『いちビジネスパーソン』として尊重されている、と思います。 

――――VIEWについて感じたことを教えてください

『情報を必要としている人に、その情報を提供する』ことはシンプルなことですが、大切なことだと考えています。

VIEWというサービスの『無駄な情報を届けない』『その人にとって価値のある情報を提供する』という点がとても共感できます。従来の転職サービスは、たくさんの求人が紹介され、何通もメールが来て、どれが自分にとって大切な情報なんだろう…?という形になってしまうと思います。

その人が必要としている情報を、ノイズなしに的確に提供できるエージェントと繋がれるのは価値があると思いました。